バスボムに、愛を込めて
「俺は……そういうことに偏見を持ってる自覚はなかったけど、いざ身内が、しかも信頼していた兄貴がそういうことになってるのを目の当たりにしたら、高校生の俺は平常心じゃいられなくて……」
その時から、本郷さんはリョータさんを避けるようになってしまったのだそうだ。
異常なまでの潔癖症が目覚めたのも、同じ頃から。
そして、恋ができなくなったのも……
「あんなに好きだった彼女に、触れられなくなるとは思わなかった。でも、別れたくはなかったから、包み隠さず事情を話したんだ。誰にも言えなかった夢を応援してくれた彼女なら、理解してくれると思ったから。でも……」
ずっと壁の一点を見つめて話していた本郷さんの瞳が、初めて揺れた。
あたしは、彼の膝の上で組まれた両手を、思わず自分の両手で包み込む。
あたしなんかじゃ微力すぎるかもしれないけど、少しでも勇気を分けてあげたくて。
本郷さんは、そんなあたしを見つめて小さく頷くと、再び口を開いた。
「彼女の言ったのは、たった一言。“冗談でしょ?”――ただ、それだけだった。その日から次第に、避けられている、と感じるようになって、だからといって俺の方も歩み寄ろうとしなかったから、そのまま自然消滅だ」