バスボムに、愛を込めて


「……なるほど。で、中身を何に変えるか案はあるのか?」


俺がそう言うと、彼女は一気にしゅん、とうつむき、小さく呟いた。


「それは、まだ……」


相変わらずわかりやすすぎる反応に思わず吹き出してから、俺はその頭をぽん、と一度叩いて言う。


「ま、それは皆で考えれば大丈夫だろ。早く実験室に戻ろう。皆まだショックから立ち直れてなくて、部屋の空気がやばいんだ」

「――あ、その前に、ちょっと」


歩き出そうとした俺を、美萌がそう言って引き留めた。
そしてさっきの袋の中から今度は一枚のチラシを取り出して、俺に手渡す。


「これ……たまたま道で配ってて。一緒に行きたいな、と思ったんですけど」


チラシの写真に写るのは、赤い提灯、屋台に花火に浴衣姿の女性たち。

それはこの会社がある場所からほど近い下町で行われる、夏祭りを宣伝するものだった。


「……行けるかな、俺。ああいう場所に出ている食べ物は長年避けてきたが……」

「じゃあなおさら行きましょうよ! あたしが本郷さんの潔癖克服のお手伝いをします!」

「まあ……いつまでも逃げてたって仕方ないしな。でも、行くなら土曜がいい」


俺はそのチラシに書いてある日付を指さしながら言う。

祭りの開催されるのは、金曜の今日から三日間。別に他の日に特に予定があるわけではないが、俺は中日(なかび)の土曜を指定した。


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