バスボムに、愛を込めて


「……わかった。食うよ」


その可愛さに負けて、俺は仕方なく石段の一番上に腰かけてさっき買ったものを広げる。

隣に座った美萌が箸を持ち、目当てだったじゃがバタを一口分掴むと、俺の口元へ運んだ。


「はい、瑛太さん。あーん」


……なんだか新婚みたいだ。とか思う俺は、もしかしたら美萌に思考回路が似てきたのだろうか。

でも、もしそういう将来があるなら、美萌には是非白いフリルのついたエプロンを着せて料理をさせたい。
……って。今、何を思った俺? もしかして、妄想してたのか……?

はっと我に返り口を開くと、ほくほく温かくて滑らかな舌触りのものがそこに入ってきた。

……イモ。バター。黄金の組み合わせだな。


「……美味い。もう一口」


素直な感想を言えば、美萌は嬉しそうに笑って、ジャガイモを箸で切り分けてくれた。

恋のパワーってやつは本当にすごい。

結局、祭りの間に焼きそばも唐揚げもイカ焼きも今川焼きも美味しくいただいた俺。

それは紛れもなく、隣に美萌がいてくれたおかげ。

美萌との時間を重ねれば重ねるほど、彼女に対する愛情が深くなる。

笛と太鼓の軽やかな演奏が響く、賑やかな夏の夜。

俺はそんなあたたかい気持ちを実感しながら、提灯の下をゆっくり、彼女の手を握り歩いた。


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