バスボムに、愛を込めて


上下に動く喉仏にどきりとしながら、でも、さすがにこれはひどいと思う。

あたしも喉、乾いてるのに……

あからさまに物欲しそうな顔で、あたしは彼の横顔を見つめた。


「……欲しいか?」

「欲しいです」

「なら、やる」


やる、と言いながら、コポリと音を立ててまた水を口に含んだ瑛太さん。

欲しいって言ったのに、なんで……


「――――んっ!」


いきなりあたしの口に被さった彼の唇。

そこから、瑛太さんの熱が混じったお水が流れ込んできて、あたしは必死でそれを受け止めた。

それでも口の端から零れてしまったお水を手で拭いながら瑛太さんを睨むと、彼はふっと笑った。


「何笑ってるんですか! 少し濡れちゃいましたよ浴衣!」

「……悪いな。今、俺の趣味はお前をいじめることになりつつあるらしい」

「もう……」


浴衣姿ってだけでも凶器なのに、その意地悪な笑顔で見つめるなんてもう凶悪犯罪です……


< 203 / 212 >

この作品をシェア

pagetop