バスボムに、愛を込めて


“春になったら桜が綺麗ですよ”と不動産屋さんが教えてくれて、だから駅まで少しかかるけどこの先のアパート住むことを決めた。

今は七~八分咲きといったところかな。あたしは街灯に照らされてぼんやりと浮かび上がる薄ピンクを見上げる。


「桜……それもいいかも」


またバスボムのアイデアがひとつ浮かんだ。

すかさず手帳に書き込んで、あたしは足取りも軽くアパートへと向かう。

一階は若い女性の一人暮らしにはおススメしない、と不動産屋さんには言われたけれど、上にも下にも男兄弟が居てやんちゃに育ったあたしは、あまり犯罪とかに対する恐怖がなくて。

両親にすら“お前には色気がないから平気”と、初めての一人暮らしにも関わらず全く心配されず、同じ間取りでも上階よりは家賃が安いからと決めたあたしのお城は三階建てアパートの一階、角部屋。

白い外壁がちょっとメルヘンチックで気に入ってるんだよね、なんて思いながら建物に近づいていくと、あたしの部屋の前に不審な男の影が。


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