バスボムに、愛を込めて


「……弁当のことは申し訳ないと思ってる。だけど食えない物は食えない。こんな男と一緒にいるのはごめんだと思うならもうここで別れよう。……無理矢理連れてきて悪かった」

「本郷さん……」


あの本郷さんが、こんな風に謝るなんて。

……無理矢理、なんかじゃない。お弁当のことはショックだったけど、ここまでついてきたのはあたしの意志だ。

ここでお別れなんて、そんなのいや。
もっと本郷さんといたい。あなたを知りたい。その心に近付きたい……

あたしはすうっと息を吸い、さっきまでの鬱々とした気持ちとか、涙とか、切ない思いとかを、吸い込んだ息と一緒に全部飲みこんでから言った。


「あたし……しつこい女なんです」

「……それは、知ってる」

「ついでに単純だから、今本郷さんに手首掴まれてるのとか、嬉しくてしょうがないんです」

「……ホント馬鹿だな」


――ああ、いつものあたしが戻ってきた。
本郷さんの“馬鹿”を冗談として受け止められる、元気な心が戻ってきた。


「だから……まだ一緒にいたい、です」


あたしがそう言うと、本郷さんは眩しそうに目を細めた。

光を放つ太陽は真上の空にあるのに、どうしてだろう。


「……行くぞ」


それだけ言った彼は、手首を掴んでいた力を緩めると、そのままあたしの手を握った。

う、そ…… 本郷さんが、あたしと手を――――


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