地の棺(完)
ひとつめの真実
穴にいたのは約二時間。


わたし達を見つけてくれた雪君は、喉が乾いたと訴える桔梗さんのためにミネラルウォーターを取りに行こうとしていたらしい。

半開きになった障子戸に気づいた雪君は、その隙間から畳の上に不自然なベニヤ板が敷かれているのに気が付いた。

板をずらすと、そこにはぽっかりと空いた穴があり、覗き込んだ先にわたしと初君がいた、という状況。


雪君はすぐに快さんやシゲさんを呼びに行き、わたし達は順番にロープで引き上げられた。

最初にわたし、そして初ちゃんの順で。

輪を作ったロープを腋の下にくぐらせ引っ張る。

細いロープだったせいか、体に触れる部分がこすれて痛かった。

後で見たら薄皮がめくれていたけど、背に腹はかえられない。

幸いわたしの左足は骨折にはいたらず、軽い捻挫ですんだ。

問題は初君で、左手の骨がぽっきりと折れ、そのせいで熱がでていた。

穴から出てすぐに気を失うように寝た初ちゃんは、一時間がすぎても意識を取り戻す様子はみられなかった。 



初ちゃんは一言も痛いと言わなかった。

いくら暗くてわからなかったとはいえ、もっと気にかけてあげなきゃいけなかったのに。


言葉が悪いし、意地悪でなにを考えてるのかわからない人だけど、暗闇の中、わたしに不安を与えないようにしてくれたのかと思うと、言葉では言い表せない複雑な感情があふれ出しそうになる。


早くここから出て、病院に連れて行かないと。
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