地の棺(完)
心機の食卓
志摩家の玄関は広く開放的なつくりをしていた。

足を踏み入れた時、最初に目についたのは銀色の額に入ったA2サイズほどの絵画。

アルファベットのSという形に似た島の絵だ。

淡い色のパステル画で右下隅に『加岐馬島にて』と書かれている。

床は大理石でできており、天井からは白いガラス製の花の形をしたライトがオレンジ色の明かりを灯していた。

左側にはガラス製のシューズケースがあり、雪君に言われてサンダルを仕舞う。

用意されてあった濃いグリーンのスリッパを履きボルドーの絨毯が敷かれた廊下を奥に進むと、右手に階段が左手に緑色の室内ドアが見えた。


「このドアの向こうは、僕たち家族の部屋があります。

階段の先は多恵さんやほかの家政婦の方の部屋や台所が。

蜜花さんのお部屋はこちらです」


わたしが頷いたのを確認すると、雪君は二階に移動した。

U字型の階段を上るとすぐにホテルのロビーのような空間がある。

大きなテラス窓に三人掛けのソファーがふたつ、外に向けて並べられていた。

ここが外から見た時に一際目を引いた大きな窓のところだろう。

ソファーの両脇にはカフェテーブルが置かれ、その上にはピンク色の薔薇が一輪飾られていた。


「ここはカフェスペースです。談話室という人もいますが。
自由に使ってください。

蜜花さんのお部屋は……えっと、こっちです」


雪君は左右の廊下の先を見て、右側に手を向けた。

わたしもちょっとだけ左を見てすぐに後に続く。
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