地の棺(完)
終演
結局。わたしはこの旅でなにを見つけることができたんだろう。




火に包まれた洋館が完全に崩れるより早く、山道の方から多くの人の声が聞こえた。

紺色の制服に身を包んだ五人の警察官と、紺色の法被姿の消防団が十人ほど。


その中に黒いジャージ姿の三雲さんがいた。

三雲さんは激しい炎を噴き上げる自分の家を見ながら、呆然とした顔で立ち尽くしていた。

そこに近寄ったのは初ちゃん。

三雲さんは泥と黒い煤に塗れたわたし達を見て、露骨に顔をしかめたが、その右頬を初ちゃんが思いっきり殴りつけた。

それを見た消防団の人が初ちゃんを取り押さえると、シゲさんを地面に寝かしつけた快さんが三雲さんに右手を差し伸べる。

三雲さんがその手を掴むと、快さんは左手で思いっきり三雲さんの右頬を殴りつけた。


再び地面に転がった三雲さんを見下ろし、睨みつける。


「あんたは全部知ってたんだろう? 真紀ちゃんが死んだときに、雪の仕業だって。

雪が生き神として扱われてるのを黙って見て見ぬふりしていた俺も大概だけどさ、父親のあんたが逃げ出してどうするんだよ。
自分がやらせたことだろう?

島民たちに尊敬され、敬われたいがために雪の身を糞みたいな生き物に捧げたんだ。

雪は本当は優しい子だった。

それをあんな風に歪めて……」


快さんの目から大粒の涙が零れる。

三雲さんは二人に殴られた事が効いているのか、ふらふらしながら立ちあがると、首を左右に振った。


「……あれは柚子に惚れていた。
だから事故現場で見た蜜花さんを代わりに仕立て、執着することは目に見えていたんだ。

だから私は雪に何も言わなかったのに……快。お前がいけないんだぞ」


「なに?」


三雲さんは眉間に皺を寄せ、快さんを右手で指さした。


「お前が連れてきた女だよ。あの女が柚子のことに興味を持って調べたんだ。

そして事故から八年たって、柚子の妹が目覚めたことを雪に教えたんだぞっ」


「真紀ちゃんが……」
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