地の棺(完)
闇が生むもの
部屋に戻り鍵をかけた後、わたしは自己嫌悪で胸が押しつぶされそうだった。


シゲさんのことを傷つけてしまった。

シゲさんを慰めになれば、そう思って追いかけてきたけど、結果的に一人になる邪魔をしてしまっただけで。

なにをしてるんだろう、わたし。

情けない気持ちで、壁にかかった押し花を見上げる。


姉さんなら。

姉さんならどうしたの?


「教えて、姉さん……」


ぽつりと口から出た言葉は、誰にも聞かれることなく掻き消える。


ネックレスに通していた鍵を取り出し、手の中で握りしめた。

銀色の小さな鍵。

これが送られてきた時に抱いていた、わたしの中の使命感は今はない。

ただこの悪夢から早く目覚めたいだけ。


目を閉じ、心の中に広がる闇に身を沈めようとした時だった。


コン、コン、と間を開けて二回、ドアをノックする音がした。


瞬間的に出たくない。

そう思った。


でも、無視することもできなくて、立ち上がりドアに近づく。


「……はい」


「雪です」


予想はしていた。

食事の部屋を出る前、雪君がなにか言いかけていたから。


「ごめんなさい。
もう寝ようかと思っていたところで……」


「少しだけでいいんです。
少しだけ、会ってはもらえませんか?」
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