【ミドリガメ日記】みーちゃんと私

「また、寝ぼけたの?」

くすくすくす。

でかでかちゃんの笑い声に、私は、はっと我に返った。

ゆっくりと、視線を巡らせる。

目の前にはでかでかちゃんの、いつもののんびりしたお顔。その甲羅は15センチほどの大きさ。

住まいは75センチ衣装ケース。

ぬくぬくと気持ちの良いライトの光。

「あれ?」

「どうしたのよ? 何だか私の名前を、一生懸命呼んでたわよ?」

「え? あ、ああ。何でもないの。寝ぼけちゃったみたい」

私は『てへへへっ』って照れ笑いをして見せた。

「ただいま~、お腹減ったよ、お母さん!」

今はもう小学1年生になったみーちゃんが、元気に居間のドアを開けて入ってきた。

「はいはい。今、ホット・ケーキを焼いているから、手を洗ってきて」

「はーい」

洗面所に向かうみーちゃんが、私達の水槽を覗き込んで「ただいま、ちびちび。でかでか!」とニコニコ笑顔を向ける。

「お帰り、みーちゃん!」

私とでかでかちゃんは、聞こえるはずはない、返事をする。

でもね、きっと心は伝わっているよ。


私はそう信じてる。




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