毎日同じ日々の繰り返し。 不満はないけれど、何気ない日々は、行き場の分からない不安を運んでくる。 どこかの誰かが、そんな日常を壊してくれるかも。 もしかしたら、明日は世界が変わってるかもしれない。 そう思いながら、今日もいつもの朝を迎えている。 ベッドから出て、部屋の鏡には見飽きた顔が写ってる。 違うのは、寝癖だけ。 ため息なのか、あくびなのか。 どこか馴染まない高校の制服。 自分は、どこかの誰かさんで、どこかの誰かの物語の通行人A。 そんな気がしてしまう。 何かが変わるかもと、新しい制服に袖を通した日が、今は遠く感じる。 いつまでも馴染まない制服と、履き慣れた革靴を履いて。 きっと明日も、どこかの誰かの人生を歩んでいく。 それでも、世界はほんの少しの変化で色を変えてしまう。 きっと、これはどこかの誰かのありふれた物語。 それでも、たった一つの、自分だけの物語。

いつのまにか慣れてしまった今。 何気なく歩いた道に、優しい風が吹く。 振り返ったその先に、何かがあるわけじゃない。 もう、何度も通った道。 懐かしい思い出が、夕日と共に今と重なる。 ただ無邪気に笑って、この道を歩くだけで楽しかったあの頃。 いつまでもこのままで。 そう思えた、あの時代。 あの頃、思い描いていた未来とは違うけど。 今は思えるんだ、何かの特別なんかより当たり前の日々を。 どうしようもない日々も、長い夜も、いつか前に進む時が来ると。 その日の風は、どこか優しく感じた。 少しだけ、口元から笑みがこぼれた。 これは、田舎の小さな町の恋の物語。