諏訪まことさんの作品一覧

いざよいの月

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恋愛(その他)40ページ

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長くしなやかな指が、唇に触れる。 まるでその行為が合図のように、 美緒は静かに目を閉じる。 右か左か、前なのか後ろなのか。 変わらない、変えることの出来ない 己の立ち位置。 どこへも行くことの出来ない心の迷いを、 冷ややかな指先から悟られないように。 この体の震えを気づかれないように、 ゆっくりと目を閉じた。 瞼の向こうは、暗く……そして無音の世界。 その中にただひとつだけ、 己の迷いを象徴するかのように光る 十六夜の月。
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