私の母は、誰から見ても平凡な主婦だった。 それなのに、あの日、幼い私を連れ母が会いにいったあの青年（ひと）は、 驚くほど綺麗な男だった。 幼かった私ですら、一瞬、息が出来なくなるほど。 彼は、にっこり笑って私に目隠しをする。 少しひんやりとした長い指の隙間からそっと覗くと・・・ 不釣合いすぎるほど平凡な女である母を、彼は優しくハグしてた・・・ あの青年は母にとって、とても特別な人だったらしい。 あの時から随分と月日が流れた。 私は社会人になり、恋愛のなんたるがわかる歳になった。 そんなある日、会社のお局課長の不興を買った私は、今までの仕事と一切関係のない「掃き溜め部門」に左遷されれてしまったのだ！！ そこで私が出会ったのは、「掃き溜め部門」には不釣合いなほど綺麗なルックスをした、ちょっと生意気だけど憎めない年下の男、柿坂 海里（かきさか　かいり）だった。 あれ・・・？ この子の顔・・・ 誰かに似てる気がする・・・！？

あの時の二人は、まだまだ子供だったね。 遠く離れてしまったあなた。 そんなあなたと再会したのは、本当に偶然だったんだよね。 あれは初恋だった・・・ あなたは私の初恋の人だった・・・ もう子供の頃のことだったのに・・・ あれからこんなに月日が経ったのに、まだドキドキしたりするんだね。 あなたが作ってくれた、工作のラジオ。 あの雑音交じりの音は、まだ、私の心の中に残っているんだよ。

あなたには今、好きな人はいますか？ あなたには今、叶えたい夢はありますか？ あなたには今、傍で寄り添ってくれる大事な誰かはいますか？ 私が愛した人は、とてもキラキラ輝いて、とてもまっすぐで、そして、その流れ星のような人生を、命ある限り必死で生きた人です。 男だとか、女だとか、そんなこと、私には関係なかった。 ただ・・・ 私は、あの人が好きで好きで、しょうがなかった・・・ ただ、それだけだった・・・・ 甘くて苦いストロベリー それは、きっと恋の味なんでしょうね。