桜の樹のように・・・
私は25歳の時に刺青を入れた。

別に、憧れがあったとか、そういう訳ではない。

漠然と思いつき、入れたいと思った。

当時、自分の周りには刺青を入れている友達なんて居なかったし

付き合っていた彼氏は真面目人間だったし

誰に相談する訳でもなく、入れようと決めた。

桜の花を入れたかった。
これだけは何故か、決まっていたんだ。

何故に桜の花だったのか・・・

桜の木って、どんどん育つし根も強い。
毎年、花が咲いて、その華やかな姿は
ほんの短い期間かもしれないけれど、
でも、見ている人々を魅了し、雄大なる存在感と
美しさを備えていて・・・・

けれど、はかなく、弱い・・・

風が吹けば花びらを、はらはらと散らし、
雨が降れば、蕾をも落としてしまう事がある。

それでも、花を失っても
桜は、強く根をつけ、育ち続ける・・・。

そして、また、長い冬を越えて美しい姿を見せる。

たとえ、それが、ほんの一瞬であっても、
桜は、どんな困難にも負けない。

育ち続けるんだ・・・。

私は桜のように生きていきたかった。

たとえ、花びらを散らし、蕾を落としても
葉のつかぬ、冬をじっと耐え忍んでも

何度でも花を咲かせ、育ち続けたかった。


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