未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「だったらさ、メイドにうつつを抜かしてないで、早く嫁さんを決めてよ。みんな気が気じゃないんだからさ……」

「だ、誰がメイドにうつつなんて……」

「僕なら遊びは遊びって割り切れるけど、信之さんは違うでしょ?」

「…………」


確かにそうかもしれない。慶次は女性関係も含め、とにかく遊び慣れているが、俺はそうでもない。昔から不器用というかクソ真面目と言うか……

特に女性関係については我ながら真面目だと思う。そもそも“遊ぶ”という概念が無い。と言っても、恋愛らしい恋愛をした事が無いのだが……


「ねえ、あの人達の中から決めたら?」

「あの人達って?」

「またまたあ、惚けちゃって……。パパが候補に上げた令嬢達さ。5人だったかな」

「ああ……」


そう言えば数日前、慶次の“パパ”、つまり俺の叔父が写真と書類をごっそり俺のところに持って来た。それは数人の令嬢達の物で、いわゆる俺の花嫁候補達なんだそうだ。

それを見て、この人はっていう女性がいたら、後の段取も叔父がすると言うのだが……


「いい人いたの?」

「さあ……」

「さあって、ちゃんと見たの?」

「チラッとは」


チラッと写真を見た事は見たのだが、どの女性も同じに見え、全く興味が湧かなかったのだ。


「しょうがないなあ。僕が選んであげるよ?」

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