未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「信之さんの結婚に決まってるじゃないですか……」


ああ、やっぱりそれか。


「亡くなった伯父さんの遺言で、信之さんは35歳の誕生日が来るまでに結婚して後継ぎを作らないといけないんですよ?」

「分かってる」

「後継ぎは生まれてなくても、奥さんのお腹の中にさえいればいいって弁護士は言ってましたけど、とにかく結婚しないと、みんな住む家が無くなるんですからね。本当に分かってます?」

「分かってるって……」


2ヶ月前に急死した俺の父親は、生前に遺言書を書き遺していた。その事は顧問弁護士以外は誰も知らず、もちろん俺もだし、長年執事を務めて来た爺やでさえも知らされていなかった。

父親の初七日の法要が終わったところで俺達は集まらされ、弁護士がその遺言書を読み上げたのだが、その内容に全員が絶句してしまった。なんと、慶次が言ったように、俺が35までに結婚して後継ぎを作らないと、真田家の数十億もの財産を全て支援団体に寄付してしまうというのだ。

父親は半ば冗談で書いた物らしく、後で書き直すつもりだったらしいが、今となってはそれが唯一実効のある遺言書となってしまったのである。

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