闇に響く籠の歌
テレビからの音声を聞きたくない、というようにその相手は顔を下に向けている。だが、聞きたくないのならチャンネルを別のものに変えればいいだけの話。だというのに、テレビから流れるのはワイドショーを彩る明るい女子アナの声。

その声が興味深そうに綴るのが、3のつく日に発生している事件。それを耳にした時、部屋の住人は大きく体を震わせると、丸くなることしかできない。


「私のせいじゃない……私のせいじゃないわよ……なのに、どうしてよ。どうして、こんなことばかり起こるのよ。どうして、あの時のメンバーばかりがあんな目にあうのよ」


ガチガチと震えながら呟かれる声を聞く者がいるはずもない。そして、返事がないことを知っていながら、その相手は言葉を紡いでいくことしかできない。


「ねえ、深雪。あなたは私のこと恨んでるの? テレビで言ってたようにあなたがあんなことになったことで、私たちが恨まれてるの? ねえ、教えてよ、深雪……」


切々と訴える声は、だんだんと嗚咽混じりのものになっていく。それに反比例するように、テレビの中からは明るく華やかな音声だけが溢れている。そして、その音も耳に入らないかのように胎児のように体を丸めた部屋の主は同じことだけを繰り返す。


「深雪……教えてよ。あなたは私たちのこと恨んでるの? 恨んでるから、あんなことしてるの? ねえ、深雪……悪かったって思ってるのよ? それなのに、どうしてよ……」


部屋の中に散乱している週刊誌には、『わらべ歌が死を招く!』という煽情的な文句がある。このことが真実だというように、発見された変死体に無理矢理にでも何かの共通点を見つけようとしている文章。もっとも、それはテレビの中でも同じこと。女子アナに話の水を向けられたコメンテーターは訳知り顔というような表情で応えている。


「そうですね。たしかに年齢や性別はバラバラです。それでも、発見されたのがどの変死体も3のつく日。そして、検死の結果、どの被害者も明け方の3時から4時の間が死亡推定時刻。これらのことから、何らかの関連性は間違いなくあると思いますね」

「そうですよね。でも、このようなことが起こるとは恐ろしいことですよね。もっとも、小説の中でしたらよくある話だと思いますが」
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