恋物語。
「歩きながら話そう。さぁどうぞ?」
「あ、はい」
私が返事をすると会社の方に歩き始めた。
「知沙…眼鏡、変えたの?」
「え…!?」
まさか気づいてくれるとは思わず驚く。
「え。何でそんな驚く?」
「え…だ、だって…気づいてくれるなんて思わなかった、から…」
この新しい眼鏡に変えて約一週間、私の会社の人は誰もそのことを言ってはくれていない。
…っていうのはオーバーかもだけど、女性社員で先輩の早川さんだけはそれに気づいてくれた。
だけど、あとの人たちは…―。
「そりゃ気づくでしょ。…彼女なんだから。」
聡さんはそう言ってエレベーターのボタンを押した。
「///…」
“彼女”って言葉にまた照れてしまう。
「でもさ、何で変えたの?」
「え、あぁー…最近すごく目が疲れるようになって…ブルーライト?ですか?それをカットできるものに作り替えたんです」
「あぁー…パソコンとかから出てるって言われてるあれ?」
「あ、はい。そうです」
そう言った時ちょうど、エレベーターが到着し扉が開いた。
「はい、どうぞ」
「あ…ありがとうございます」
「いいえ。」
そう言った聡さんも乗り込み、“3”と“閉”のボタンを押すと扉は締まり動き出す。
「てかそれ、結構違うものなの?」
「あ、はい。違いますよ。目の疲れ方が全然違うというか」
「へぇ~そうなんだ。俺もかけてみよっかなぁ~…」
彼は遠くを見るように考えているようだった。
「度の入ってないやつもあるみたいなのでオススメですよ?」
「そう…?じゃあ考えとく。」
そう言ったと同時、目的地へと着いて扉が開いた。
「…さぁこっち。もうちょっとで着くから」
「はい。」
エレベーターを降り言われるまま彼について行く。