とろける恋のヴィブラート
「おはよう。あれ?」


「あ、柴野主任。おはようございます」


 しばらくすると柴野が出社してきた。いつも自分よりも遅い出社の奏を見て柴野は驚いて言った。


「今日は早いんだね、どうしたの?」


 御堂のイベント企画の内容などをまとめるために、奏はいつもの出勤時間より一時間早く出社した。そのことを告げると、柴野は感心感心とにこりと笑った。


「はい、昨日、御堂さんと実際の依頼者の方とお話をしました。それで、色々とセッティングとかを考えてはいるんですけど……」


 演奏家になれなくとも、奏は自分の仕事が好きだった。イベントの企画を作り上げていく工程が楽しくてしかないのだ。
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