とろける恋のヴィブラート
「後でその書類、僕にも見せてくれないか?」


「はい、もちろんです」


「それと……」


 柴野は、奏の耳元まで屈むとそっと小さく囁いた。


「今日は金曜日だから、今夜は一緒にどこかで食事でもしてから僕のマンションに行こう」


「し、柴野さん……仕事中ですよ」


「あはは、手厳しいな。じゃあ、仕事頑張って」


(金曜日……か、コンサートは明日だし……できればもう少し内容を濃く煮詰めたいんだけどな)


 奏は、企画書が映し出されたPCの画面に視線をやって、柴野の誘いに揺れていた――。
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