【B】姫と王子の秘密な関係

2.生い立ちと解放される時間 -晃介-



「晃介坊ちゃま、お目覚めの時間です」

ベッドの頭元の電話が着信を告げ、
受話器を取ると、この家の執事でもある川本【かわもと】の声が聞こえる。

「川本、起きてるよ。
 すぐに支度して降りる」

「かしこまりました。
 由毅【なおき】坊ちゃまも、先ほどお見えになりました」

「由毅兄さんはもう準備できてるんだね」

「はい」

「10分で降ります」



そう言うとすぐにベッドから飛び起きて、
シャワーを浴び、家政婦をしてくれる川本夫人がアイロンがけしてくれた
シャツに袖を通し、夏用のスーツを身に着けると慌てて一階へと降りた。


一階に降りた時には、ロビーのソファーに座って
経済新聞に目を通す、由毅兄さん。

由毅兄さんとは呼んでも、
実際の血の繋がりは存在しない。



「晃介、おはよう」

「おはようございます。
 遅くなりました」

「遅くはないよ。
 僕が早く準備が終わっただけだから。

 お祖父さまの屋敷でのモーニングは6時。
 まだ5時半にも届いてない。

 お祖父さまの家に移動しても、
 10分もかからないだろう」


由毅兄さんはそう言ってくれるものの、
この早谷【はやせ】と言う家に置いての
俺の立ち位置が弱いことを、俺自身が一番知っている。


「大蔵、車を会長の家へ。
 川本、後をお願いします」



兄さんがそう言うと、運転手の大蔵さんがすぐにリムジンの後部座席を開けて
兄さんと俺が乗り込むのを確認して静かに閉める。

深々と俺たちをお辞儀して見送ってくれる川本夫妻。


大蔵さんの運転する車は、静かに同じ敷地内に立つ
最奥の祖父の屋敷まで走り始めた。



今日は一週間に一度、早朝、定期的に行われる
早谷一族の朝食会。


『早起きは三文の徳』よろしく、
日曜日の6時にはすでにかっちりとスーツを着こなして
お祖父さまのお屋敷へと顔を出す。


すでに会長の屋敷前には、
主だった一族の関係者の車が並ぶ。

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