【B】姫と王子の秘密な関係
「あぁ、音羽。
今日はもうタイムオーバー。
もうすぐしたら更衣室も混みはじめるから、
先に着替えて来よう」
そう言うと、和羽は私を支えるように立って
ゆっくりと椅子から立たせる。
「近くまで送るよ」
アキラさまがそう言った途端、
次の瞬間には、私は力強い腕で抱きあげられてた。
俗にいうお姫様抱っこのまま、
伊代さまと、
美紗さまと別れて更衣室へと連れていかれた。
「あっ、有難うございました」
「別に、お大事に。
総司、後は頼む」
そう言うと、アキラさんは
また人の輪の中へと消えていった。
ウィッグを外し、衣装を私服に着替えて
メイクを外しながら、毎日の日常へと立ち返っていく。
今日の変身アイテムを一気にキャリーに詰め混むと、
和羽が即座に転がして、私たちはゆっくりと会場を後にした。
有名レイヤー、アキラ。
その人との出会いで、
私の運命が大きく動き始めようとしてたなんて、
その時の私にはまったく知る由もなかった。