【B】姫と王子の秘密な関係

3.意識する心 -音羽-



イベントの日、
初めて私は噂のレイヤー・アキラと出逢った。



何て言うか……一瞬、人であることを忘れてしまったって言うか
アキラさんがするさり気ない仕草に、魅入ってしまう私が存在した。


そして……彼の気遣いと優しさ。


そんな優しさが遠い日の記憶と
僅かに重なった。


初めて出逢った存在なんて、放っておけばいいと思うのに、
彼は……和羽たちですら気が付かない、
私の体調の変化に真っ先に気が付いてくれた。




そして……私自身の負担にならないように、
額へと貼ってくれた、冷え冷えシート。




なんであんなにも用意周到なんだろう。



石田散薬なんて……わざと紡いだ彼の言葉は、
照れ隠しだったのかな?っとか。




彼に貰った干からびてしまった冷え冷えシートは、
もう捨ててしまえばいいのに、
何故か捨てることが出来ないままに、
今も自室の硝子テーブルの上に放置されてた。





「音羽、さっ今からバイトだね」





大学の講義が終わって、校門前で合流した私と和羽は
いつものようにコンビニへと二人で姿を見せる。




「「おはようございます」」

「あらっ、今日も宜しくね」




朝9時くらいから17時くらいまで勤務してくれてる
ご近所で主婦してらっしゃるスタッフさんが迎えてくれる。



「和羽、私二階で着替えてくるわ」



そう言って自宅へ続く階段を駆け上がると、
着替えを済ませて、早々に階下へとこ駆け下りた。




夏のクールビス。



そのコンビニ、コンビニでユニフォームに
差が出てくるこの季節。



だけどうちの系列店は、
親会社が『ワンランク上のコンビニ』なんて、
わけわかんないコンセプトの元、
かっちりとした制服に袖を通す。



TシャツにGパンにエプロンとかだったら、
どんなに楽だろう。



だけどうちの系列に至っては、
真っ白のカッターシャツに赤いリボンと黒のパンツスーツ。

男性も真っ白のカッターシャツに、
ブルー系のネクタイに、黒のスーツ。

ここはホテルじゃないって言うのよ。


そんな堅苦しいまでの装いに武装して、
事務所へと入ると出勤手続をして今日の本部連絡に目を通す。


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