自由と首輪
きっかけ
私がLotusに出会ったのは大学一年生の夏休みだった。

自由の学風を謳う難関国立大学に合格した喜びと自信は一カ月で打ち砕かれ、私は周りの友人たちの非凡さや優秀さに圧倒されてしまっていた。

高校生まで優等生としてちやほやされて育ったのに大学に入っていきなり劣等生になってしまった私の心の支えが『音楽』特に「ビジュアル系バンド」というジャンルになったことは必然だと思う。

大学の勉強やサークルやバイトでは、周りの人に何一つ秀でていることがないけれど、「ビジュアル系バンド」というジャンルはこの大学の誰よりも知っている。そう思って束の間の優越感に浸ることができたから。

もともと知的好奇心の旺盛な私は新しいことを知っていくことが大好きで、だからあまり有名ではないバンドも動画サイトを見て気に入ればライブに行くということを繰り返していた。

そしてそんな時に見つけたバンドが『Lotus』だった。

動画サイトが関連動画として示した中に、まだ見たこともない名前のバンドを見つけてワクワクしながらクリックした。
それはライブ映像で表示される再生回数はまだ五千程度だったが、私はその映像にすっかり魅せられてしまった。
歌や演奏がうまいとか、曲がいいなどという理由ではなかった。
高圧的な態度でファンを煽るボーカルと、それに従うファンの「一体感」その映像を見たとき私は、言い知れぬ興奮を覚えた。

動画を見終えた私はそのままバンドのホームページに行ってプロフィールやディスコグラフィーよりも先に、ライブの日程を確認した。
「全国ワンマンツアー開催中」という文字の下にライブの日程が記されていた。
大阪のワンマンライブは八月末。幸いにもまだチケットは売り切れていないらしい。
私は慌ててコンビニに行き、チケットを発券した。

「このライブならきっと私は満たされる」

私はとてもワクワクしていた。

< 2 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop