恋の神様はどこにいる?
★新しい自分の始まり

塩焼きそばを食べ終わると志貴は後片付けまでしてくれて、今までで一番いい笑顔を見せると意気揚々と帰っていった。

でも私はと言うと、キスをされてからなんだかおかしくて。志貴が帰るまでの約一時間弱のことを、ほとんど覚えていないという有り様。

「後片付けはおまえがしろ、なんて言ってたのに」

志貴が座っていた椅子に腰掛けると、テーブルに突っ伏す。

目を閉じ意識を集中させると頭の中に浮かんでくるのは、志貴とのキスした場面だ。

そっと唇に触れ、その時の感触を思い出す。

志貴のしっとりと濡れた唇は、私の唇を貪るように何度も何度も食んでいき。

罰なら苦痛なはずなのに、そんな心の苦しみは少しも湧き上がって来ることはなかった。


またあんなキスがしたい───


だったら罰を与えてもらえるように、志貴に何か悪さをすればいいんだ!! とまで思ってしまう自分がいた。

「何考えてんだろ、私」

ふとそんな言葉が口から漏れると、一気に現実に戻される。

志貴の気持ちがわからないのに、私はなに勝手なことを言っているんだろう。

志貴にとってあのキスが、本当に罰だけのものだったら?

そう思うと切なくて苦しくて、胸が押しつぶされてしまいそう。

「志貴の馬鹿……」

口から吐いて出た言葉は本心じゃないのだけれど、そうでも言わないと気持ちが収まりきらない。




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