恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜

恋のさや当て

 
 

 その店は、どこにでもある田舎のスナックで、カウンターだけでなく大きなテーブルのボックス席もあり、スナックというには少し大きな店だ。でも、ホステスなどはいないので、女性がいても気兼ねせずに行くことができる。

 こういう時はいつも、古庄は真琴の隣を狙って座っていたのだが、今は真琴を刺激して意識させてもいけないので、カウンター席の学年主任の横に座ろうとした。


「古庄先生、こちらにどうぞ!」


 だが、平沢から声をかけられて、無視するわけにはいかず、しょうがなくボックス席へと腰を下ろした。平沢も抜かりなく、古庄の隣の席をキープする。

 真琴も石井や他の教員たちと一緒に、ちょうど古庄の向かい側に座った。


 2次会はさらに堅苦しさもなく、親しいもの同士で打ち解けて、和やかな感じで始まった。それと同時に、古庄のことを待っていた平沢の怒涛の攻めも始まった。

 周りに誰もいないかのように、平沢は古庄と二人だけの世界を作り上げようとしている。古庄だけに話しかけ、甲斐甲斐しく古庄の世話を焼き、まるで古庄専属のホステスのようだった。

 しかも、1次会でずいぶん飲んだみたいで、少し呂律が回っていない。その舌足らずな口ぶりが、ますます媚びているように感じられる。


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