第3ワープ宇宙局

売店での出来事

試験が一段落ついて、お昼の時間になった。
最終試験場から数メートル歩くと、コンビニエンスストアのような売店がある。お昼とあって人々が群がっている。
この売店では第3ワープ宇宙局仕様の食事が買える為、徹は期待に胸を躍らせていた。
「これお願いします。」
徹が売店のレジにお昼を持っていくと、売店のレジ係はなにかにやにやと笑って徹を見ていた。
「少し食事減らしたほうがいいんじゃないか?」
と言って店員はなかなか品物をレジに通さなかった。
「いいからさっさと会計しろよ!」
業を煮やした徹は店員に掴みかかると、拳を振り上げた。
店にいた客大抵は最終試験を受けていた者たちだ。彼らは、潮が引くようにさっと居なくなってしまった。
とばっちりを喰って試験に響くのを恐れたのだろう。
すると、徹が拳を降り下ろす直前に、見知らぬ中年男性に徹は腕を掴まれた。
見た目地球上で産まれ育った体格だった。
徹は宇宙飛行士の夢を諦めていた。すると、
「さっさと会計しろ。」
と中年男性は店員に言って、徹の変わりに弁当と飲み物の代金を支払ってくれた。
店員は目を丸くしていたが、やがてつまらなそうな顔つきで、仕事を再開した。

「あの、弁当代ありがとうございました。」
徹が頭を下げると、中年男性は手を振った。
「あっ俺、真山徹って言います。名前教えてもらっていいですか?後でなにかお礼したいんで。」
「お礼はいらないよ。人間だったら、当然の事が出来なきゃいけない。君もそれができるようになれば、お礼はいらない。」
中年男性はそう言って立ち去った。

(人間だったら、当然の事が出来なきゃいけない。か…。)
徹の心に深い意識として刻まれた言葉だった。

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