豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


「おい、野島! こっちこいっ」
三池の怒声がとんだ。


はっと我に返ったのか、輝の顔が青ざめる。
孝志はこわばったまま舞台を降りると、そのまま稽古場から出て行った。脇に座っていたゆうみが、素早く立ち上がって孝志の背中を追う。


突然のことに、光恵は鉛筆をもったまま呆然としてしまった。


どういうこと? いったいどうして……。


輝は三池に引っ張られるように、ロッカールームへと連れて行かれた。後ろから声が聞こえる。


「あいつ、どうしたんだ?」
「だよなあ。ま、でも言わんとすることはわかる」
「孝志と俺たちじゃ、もう住んでる世界が違う」
「ああ」
光恵の背後で、寂しそうに笑う声が聞こえた。


表面上はうまくいっていたが、この舞台は大きな問題を含んでいるのだ。
それが徐々に、目に見えてきたのかも。


それから。
光恵はどうしても輝の言葉を思い出してしまう。


「俺はミツさんの側にいる」
あれは、どういう意味なんだろう。


もしかしたら、わたしがこの舞台の調和を乱している?

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