舞台作りも仕上げの段階に入っている。
初日まで、後一週間。


ここまでくると、光恵の仕事はほとんどなくなる。午前中たまに、稽古場に寄るだけだ。時間に追われ必死になっているスタッフと役者には申し訳ないが、塾講師の仕事も少し入れ始めた。


稽古場に入ると、熱気が押し寄せる。空調はあるが、ききが悪い。みんな汗だくで仕事をしていた。


「おつかれさまです」
そう声をかけて、三池の隣に座った。


「おつかれ」
疲れているだろう三池は、それでも笑顔を絶やさない。その雰囲気は、いつも光恵を癒してくれる。


「どうですか?」
「うまくできてると思うよ。後で通しするから、見て行けば? 時間ある?」
「すいません、あと一時間ぐらいしたら、ここを出なくちゃいけないんです」
「そうか……バイト?」
「はい、すいません」
「いいんだよ、みんながバイトしてるとき、ミツは台本書いてるんだから」


稽古場の隅で一人練習をしていた孝志が、光恵の姿をみつけて手を振った。


「ミツぅーーーー!」


孝志が駆け寄って来た。


「今日来るって言ってたから、待ってたんだ」


孝志はニコニコしながら「ねえ、みてみて」と光恵を手招きした。

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