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地下鉄を降りて、いつもの通りを歩く。

会社が近づくにつれ、然程暑くもないのに、額に汗がじわりと滲んできた。

きっと昨日、叔父さんの店でワインを飲みすぎたせいだ。帰り際にちょっとため息をつきたくなるようなことがあったから、つい、いつもよりもお酒が進んでしまった。


二十七歳の、うら若き女性――と言ってもいい歳かどうかは別として――が、朝から汗臭いなんてどうなんだろう。一応、周りに不快に思われない程度に軽く香水をつけてはいるけど、このままだと汗臭い方が勝ってしまうかも。

その上、お酒臭かったら最悪だ。朝にアルコールチェッカーでチェックしたから、そこは多分大丈夫だとは思うけど……。


こんな生活が母親にバレたら「美人が台無しだ!」と、凄い剣幕で言われるに違いない。

わたしはバッグからタブレットを取り出し、三粒口に放り込んだ。