psi 力ある者 愛の行方 


私は、泉を前にしてこの考えを読まれてはならないと、思考を外界から遮断している。
けれど、この遮断する力はそれほど強いものじゃない。
もしも、泉の能力が私よりも上なら、今まで考えていた私の思考は全て筒抜け――――。

睨みつけていたウーロン茶のカップからゆっくりと視線を上げ、目の前に座る泉を見る。
いつまでも険しい顔のまま黙りこんでいる私のせいで、泉は萎縮したように大人しい。
遠慮がちにハンバーガーを完食し、ポテトとコーラを交互に口へと運んでいる。

「――――泉絖太」

フルネームで呼ぶと、ゴクリと喉を鳴らしポテトを飲み込んだ。

「……何……?」

少しだけ警戒したように、戸惑いを見せた返事をする泉。

今の私の考え、聞こえた?

心の中で語りかけてみたが、返事はない。
ただ、泉の名前を呼んだ私の顔を見て、次の言葉を。
実際に口から出る言葉を待っているよう。

聞こえては――――いない――――…?

遮断する私の力が勝っている?
それとも、力を解放していない?

実際、今私も読み取る力は解放していない。
今ここで泉の考えを読み取る事は可能だと思う。
目の前にある、泉が飲んだコーラのカップに少し触れるだけでいい。
もしくは、直接彼に触れるだけで。

けれど、泉が遮断する力を持っていた場合。
それは、呆気ないほど簡単に跳ね返されるだろう。
そうして、力と力がぶつかった時、この狭い店内を平静に保つ事ができるか……。


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