初恋はカフェ・ラテ色

響く言葉

「よっ!」

反対側のホームから降りてきた太一だった。シンプルなブルーのシャツに白いロールアップのパンツを穿いていて、見た目は本当に爽やかだ。いや、太一が爽やかじゃないって言うわけじゃないけど、高校の時の太一を知っている同級生たちが今の彼を見たら驚くと思う。

「太一、時間通り来られたんだね」
「忙しかったけどな。圭一さんが上がれって言ってくれて、ようやく上がれたんだ」
「圭一さんが? 洋輔さんは?」

よく気が付く洋輔さんなら厨房にいる圭一さんよりも先に言うはず。

太一は見つめる私の瞳から慌てたように目を反らす。

「行こうぜ。あと3分しかない」

太一が先に自動改札に向かおうとする。その腕を引っ張り、足を止める。

「太一! なんか隠してない? もしかして洋輔さん、美女と話に夢中になって太一にまで気が回らなかったとか?」
「ば、バカじゃん!? お前何考えてるんだよ。ちげーよ」
「じゃあなんで? ちゃんと話して?」

私がずいと詰め寄ると、太一は苦虫をかみつぶしたような顔をしてから重いため息を吐いた。

「お前、連絡取ってないの?」
「えっ?」
「洋輔さん、風邪ひいて休んでいるんだよ。今朝俺が連絡受けたんだけどさ、心春には言うなって。お前と洋輔さん、なんかあったのか?」

私には言うなって……? 

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