愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 きっと今まで苦労したことないんだろう。

 この場の雰囲気は、最悪だった。

 誉に負けて出席するなんて言わなきゃよかった。

 覚悟はしてたけど、ここまでひどいとは思わなかった。

 見合い相手の父親を一瞥すると、誉は婚約者がいるのでこの話はなかったことにと平然とした様子で伝えた。

 見合い相手側は、寝耳に水の話で数分固まっていた。

 だが、見合い相手は怯まなかった。

 誉の顔を実際に見てどうしても手に入れたくなったのだろう。

「その人のどこが良いんですか?そんなにその人が好きなら愛人にでもすればいい。だから私と結婚して下さい」

 その女性はすがるような目で誉の手に触れる。

 触れられた誉はばい菌にでも触れたかのように彼女の手を振り払い、冷ややかな眼差しを向けた。

 多分、愛人という言葉が彼の逆鱗に触れたのだろう。
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