私んちの婚約者
墜落、婚約者
***

「ふ、ぎゃあああっ!!」


思わず奇声を上げて、私は愁也を引き剥がした。
思いっきり彼を怒鳴りつける。


「あ、あんたどさくさに紛れてどこ触ってんのよ!?」

「え、どこって」

愁也はきょとんと聞き返す。


いやいやいや!皆まで言うな!!
確認するような手つきも要らん!


「てかココ職場でしょうが!!」


会社の社員用地下駐車場。
まだ車はここから発進すらしてないんだ。

愁也はにっこりと笑って、私にジリジリと身を寄せて聞く。


「俺はチーフ、あんたは?」

「社長令嬢」

「はい、問題なし」


大アリだ――!!
むしろ、だからこそ問題だ――!!


青くなったり赤くなったりの私の顔色なんて全く気にも留めず、彼は手を伸ばすとがっしり私の顎を捕らえて逃がさない。
もう何度も目にした、やや伏せた目にだだ漏れな色気を纏わり付かせて囁いた。


「口開けて。
またあのキス、してよ」

「ハア!?
あれもこれもあるか!!」


私は大パニック。


何なの、この人。
今までの会話の中で何が起きた!


愁也はとうとう爆弾発言を投下する。


「アンタのキス、気持ちイイ」


何を言っちゃってるのぉぉ!?


どうやら阿呆病に感染したのは愁也の方らしい。
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