私んちの婚約者
私は必死で抵抗するけど、間近で見つめられると、もうどうしていいかわからない。

楽しそうだけど、どこか真剣で。
余裕そうだけど、どこか焦燥を感じて。

殴り倒して止めるべきか、非常に悩む。せっかくの綺麗な顔に傷をつけるのもどうかと思うし。
く、イケメンは何しても許されるのか。

唇でこじ開けられた口に、滑り込んでくる熱い感触。


「ちょ……っ」


息、できないってば!


「しゅ、愁也さん?
私、病気かもしんない」

「なんで」


てか、止めようよ、その手を!


「心臓痛い。で、苦しい」


思わず涙目で申告すれば、彼はそれはそれは妖しく、微笑んだ。



「梓、それ、恋」



マキさん、恋、
生まれちゃったみたい……。


……。


「んなわけあるかあぁあ!」


大絶叫した私は、彼を思いっきり引きはがす。


危ない!
ついうっかり流されるとこだったじゃない!
この人、深夜の通販番組並みのキャッチ力だ!!


剥がされて不満そうな彼に、ビシッと指を指した。
人を指差しちゃいけません?そんなのは常識の通用する相手に限る、です!


「恋ってのは、こう見つめ合ってドキドキ、手を繋いで胸キュンとかでしょうが!!
断じてこんな迫られてビクビク、胸揉まれてぎゃあ、じゃない!」


私の剣幕に、唖然としていた愁也だったけど、すぐに吹き出す。


「……アンタいつの時代の生まれ?しかも中学生かよ」


悪かったわね!!


愁也は目に涙が浮かぶほどひとしきり大笑いして。

だけどすぐに治めて私を見つめた。
< 43 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop