星降る夜に。
これはこの3日間の代償だ。
大輔さんを騙して傷つけた代償。


大輔さんは私を抱き寄せると、苦しいくらいきつく抱きしめてきた。
背中に手を回したくなったけれど、されるがままでいる。反応したらいけない。だけど突き返すことも出来ない…。

少し経った頃、大輔さんはそっと私を解放した。



「こうしよう。東京に戻って、もしどこかで再会したら、そのときはメシくらい付き合ってくれよ。出くわす確率なんてほとんど無いだろうけど」


寂しそうに笑う大輔さんを見て、胸がしめつけられる。
ここで偶然出会ったように、また出会うことってあるのかな?あるとしたらきっと、運命以外の何ものでもないだろう。



「そのときは美味しいもの、ご馳走してね」


「おう。そうだ、フルネーム言ってなかったな。吉岡大輔、覚えとけよ」


「私は宮坂莉子」



私たちはもう、手をつながなかった。


体に残る、抱きしめられた感触。
鼻に残る、お日様みたいな優しい香水の匂い。

それだけが今の私を包んでいた。
< 32 / 171 >

この作品をシェア

pagetop