星降る夜に。
「はい。でもどうしてそれを…?」


「宮坂さんを下の名前で呼んでらっしゃいましたし、その指輪をうちの社長が褒めてまして」


「それは光栄です。実はまだ結婚指輪が決まってないんで、色々見て回ってるんですよ。今度お邪魔させていただきます」


「ぜひいらしてください」



自分がやましいことをしているから、何気ない会話にもヒヤヒヤする。

ここに結婚指輪を見に来るなんて絶対に嫌だ。

大輔さんがいるところで指輪を選ぶなんて、絶対にしたくない。



「莉子、運転気をつけてね。吉岡さん、それでは失礼します」


「暑いからちゃんと水分摂ってね」



誠さんは大輔さんに会釈すると、再び歩いて行った。どこかに営業車を停めてあるのかな。

誠さんの姿が人混みに消えてしまうと、大輔さんは名刺をくしゃくしゃに丸めた。



「…莉子はあの男のものなのか」


わずかに震える声が怒りを帯びている。


「私も失礼します」



私は誠さんのもの。

大輔さんと二人の時間を過ごしたら、きっとその自覚を忘れてしまう。

だけど心の奥底ではずっと忘れたくない。どうしようもなく惹かれている気持ちを。


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