グッバイ・メロディー
「こうちゃんってたまにいじわる」
変に汗をかいてしまった額を拭うわたしとは反対に、自由気ままなギタリストは涼しい顔をしてギー子さんをスタンドに置いた。
「腹減った」
本当にマイペースなんだから!
入院患者を抱える市民病院に年末年始は関係ない。
きょうも忙しく働いている清枝ちゃんにかわり、野菜室の残り物で簡単なチャーハンを作り、昼食にしていっしょに食べた。
学校のある平日の夜なんかも、めんどいと言ってこうちゃんは平気でご飯を抜くから、清枝ちゃんのいないときはわたしがなにか作って食べさせたり、ウチでいっしょに食べてもらうこともある。
ご飯を食べているときのこうちゃんは大型犬みたいで本当にかわいいの。
なにを作っても、どれだけ手抜きでも、たまに失敗して焦がしても、おいしいと言ってくれる。
本当においしそうに食べてくれる。
もっとレパートリーを増やそうかな。
こうちゃんがギターでわたしの耳を癒してくれるように、わたしはこうちゃんのお腹をおいしさで満たしてあげたいなって、ばかみたいだけど本気で思うんだよ。