グッバイ・メロディー
こうちゃんはなおも口を動かし続ける。いつもはぜんぜんしゃべらないくせに。
「美術の岡部先生のことも。中学んときはサッカー部の唐島先輩だったし、小学校んときは選手リレー常連の武田、幼稚園はゆり組の」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってストップ!」
そんな昔のことまで。
いったいどういう記憶力をしているわけ。
ゆり組のユウタくんのこと、わたしですら、いまのいままですっかり忘れていたんだよ。
「よく覚えてるね……」
「忘れない」
それにしても、こうしてずらっと並べられるとミーハー丸出しで、本当に情けない。
「でもなんていうか、ほら、みんな芸能人みたいな感覚だよ。ほんとに好きとか、そういうのいっこもなかったと思うよ。それに周りの女の子がかっこいいって言うから、つられちゃったみたいなとこもあって……」
「知ってる」
こうちゃんがちょっと笑いながらうなずいた。
知ってるって、なに。
くやしい。
反撃したいのに、こうちゃんが誰かのことをかわいいとか、いいなとか言うのは一度も聞いたことがなくて、やられっぱなしだ。