独り言<あるOLの一日>

身支度

残りを一気に野菜ジュースで流し込むと、
「さて、今日は何を着るか‥。」

クローゼットからあふれてハンガーラックにかかっている洋服を眺める。

洋服は一応年相応の物を着たい。

とはいえ、ファッション雑誌にあるン十万円のスーツなどとてもじゃないが手が出ない。

ファッション雑誌にはなぜ普通のOLにはとても手が届かないような高価な洋服ばかり
掲載されているのだろう?

読者のほとんどは普通のOLや主婦ではないのだろうか?

それとも、そんなに日本にはお金持ちがたくさんいるのだろうか?

真奈美の部屋の片隅にある半間のクローゼットとハンガーラックには、国産ブランドのバーゲン品を中心とした色もベージュや茶色、紺色、黒という地味で‥無難なパンツスーツが並んでいる。

もちろん、「ストレス発散」と称してクレジットカードの分割払いで衝動買いしたちょっと高級品もいくつか並んでいる。

でも、そういう高級品は大抵もったいなくて普段は着られないし、第一着て行く場所もない。

次のシーズンがくる前に苦い思い出と共に、クローゼットの奥で忘れ去られる運命にある。

そして後に残るのは、忘れた頃にやってくる支払い明細書と一抹の虚しさだけである。

これが、現実であり、貯金が貯まらない大きな要因でもある。 
   
今日は、こげ茶のハイネックの半そでコットンセーターにベージュのパンツスーツにした。

ほんとに無難な格好である。

身長が165CMの真奈美は35歳を過ぎてからはもっぱら、パンツスーツで通している。

20代には色々試してみたが、どうもしっくりこないし、段々流行を追いかける気力も
萎えてしまったのだ。

そのせいか、いつの間にか「動きやすい、着やすい‥」が洋服選びの基準になり、気がつくとパンツスーツに落ち着いていた。

おかげで、コーディネートは簡単だ。

靴は、少しヒールのあるローファータイプが主流である。
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