独り言＜あるＯＬの一日＞
朝の行事

部屋

ベッドに腰掛けていつものようにテレビをつけると、見慣れたコメンテーター達が先週起きた猟奇殺人事件についてそれぞれ持論を述べていた。

「まだやってるよ‥」とつぶやいて、テレビから目をそらしぼんやりと部屋の中を見渡した。

そこは、夢で見た爽やかな朝の情景とは無縁のちっぽけで侘しい部屋‥

新宿から電車で３５分程の郊外にあるマンションの一室である。

７畳あるかないかのその空間は、真奈美のダイニング兼リビング兼書斎兼寝室だ。

玄関に通じる隙間には、流し台とガスコンロ、かろうじて小さい冷蔵庫が並んでいる。

その反対側にはユニットバスとトイレ、物入付の洗濯機置き場がある。

トイレは一応、独立している。

ベランダも猫の眉間くらいのがある。

管理費込みで家賃が６万３千円のこのワンルームマンションは、

到底「わが家」といえるようなものではなく、その名の通り「ひと部屋」である。

この部屋に住むようになって５年になる。

幸い建物の南側敷地が地域の家庭菜園になっているので日当たりがとても良い。

それがこの部屋に決めた大きな理由である。

予算は少しオーバーしたが、陽の当たらない暗くて寒い部屋で暮らす気にはさすがになれなかったので納得している。
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表紙・目次

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