AfterStory~彼女と彼の話~

 ┣2人の誓い(沙紀×彰)

【東雲沙紀side】

 此れで何度目だろうかと考えるのはやめたいけど、モヤモヤしながらもスマホを持ち続けて話を続ける。

『折角約束をしていたのに、ごめん』
「いいよ。それよりも事件を解決しなくちゃ、私のことは気にしないで」
『……ああ。じゃあ行ってくる』
「行ってらっしゃい」

 私のスマホにかかってきたのは彼氏である南山彰(みなみやま あきら)からで、久しぶりに休みが重なったと思った矢先に管轄内で事件が発生したので、これによって暫くは事件の捜査に駆り出されるからプライベートな時間を過ごすこともなくなった。

 そう…、私と南山は警察官なのだ。

 私は生活安全課(主に少年犯罪、経済環境事犯およびサイバー犯罪やストーカーなど、防犯保安活動全般を手がける)に所属していて、南山は刑事課の中でも主要とされている"強行犯係"(殺人・恐喝・強盗・誘拐等)に所属していて、ひと度事件が起これば休みを返上して捜査にあたる。

 なので、まともにデートらしいことは叶わないのもあるけれど、救いなのは同じ警察署で働いているから、顔を会わすことは可能だけど、顔を会わすって言ってもお互い仕事中だし、南山が刑事として真剣に取り組んでいるのを交際する前から見てきているし、交際しても南山のスタンスは変わっていない。

 刑事と交際するとデートがキャンセルされる場合もあるのは日常茶飯事だし、私の我が儘で南山の仕事を邪魔をしたくないから、送り出すときは明るい声で言うようにしてる。

 その方が南山も仕事がしやすいしと、気を取り直して、お一人様時間を満喫しようっと。

 S県の小宮駅前にはショッピングビルが多く立ち並ぶので、買い物するには便利だから来た。

 駅前通りを歩いていると、年末だからお正月用に使う門松やしめ飾りが販売されている。

「もうすぐ新年か…」

 時間をみて南山と初詣に行けたらいいなと淡い期待をするけど、どうかな。

 もう少し私の方から出掛けたいとか言ってみるべきなのか…、南山に片想いしてた期間が長くて、いざ両想いになるとどうやって自分の気持ちを上手く相手に伝えるかの加減が分からない。

 適当にぶらぶらと歩いていると、信号の所で人だかりがある。

 どうしたんだろう?私は人だかりの中を通ると、お年寄りの女性が地面に座っていて、しかも足に怪我を負っていて顔色も真っ青で、私はお年寄りの女性に駆け寄った。

「車がくると危ないので、此方に移動を出来ますか?」
「はい…」
「すいません、手を貸して頂けますか?」

 直ぐ側にいた野次馬に助けを求めると、私と一緒にお年寄りに手を添えたり、車が来そうになると迂回してもらえるように誘導をしてくれる人たちが協力してくれた。

「救急車を呼びますね」
「ありがとう…、アイタタ…」

 スマホで救急車を呼び、到着するまでハンカチをお年寄りの女性が怪我をしている所に当てた。

「どうしてこんな怪我を?」
「急に鞄をひったくりされて」
「警察に届け出をしましょう」

 私はスマホで自分が所属しているB警察署に連絡して、事情を話す。

 暫くして救急車とパトカーが到着したけど、パトカーから南山が降りてきたのにびっくりする。

「東雲、お前が呼んだのか?」
「うん。今救急車に乗っているお年寄りの女性の証言で、ひったくりにあって怪我をしたの」

 今は警察官としての職務を全うしなきゃと、お年寄りの女性から聞いた証言を南山に伝える。
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