AfterStory~彼女と彼の話~

├彼が風邪を引きました(星野美空side)

【星野美空side】
彼が風邪を引きました。


「うわ…」

木曜日の午前、2階の編集部にICカードを使って入るとマスク姿の人たちが多くて、風邪が流行っているんだなと分かる。
ファッション部を見ると殆どの人がマスク姿で、幸雄さんもマスク姿でかなり辛そうにしていた。

私は郵便物を手にして、幸雄さんに近付く。

「水瀬編集長宛の郵便物をお持ちしました」
「ありがと…、ゴホッ」

郵便物を渡した時に指が触れたけど、幸雄さんの指はかなり熱い。

「熱がかなりありますが、総務課から薬をお持ちしましょうか?」
「病院へ行ったから大丈夫だよ、ありがとう」

幸雄さんはにこりとするけど、明らかに無理をしているように感じた。

昨日は雪が降ったし、残業続きの幸雄さんだから、きっと寒さで体調を崩しちゃったのかも。

「無理はしないで下さいね」
「気を付けるよ」

周りからみれば普通の会話だけど、恋人としては心底心配しているから気持ちは穏やかじゃない。

本音はオデコを触って熱を計りたかったけど、私たちが交際をしているのは秘密だから、そんなことは出来なくてグッと我慢する。

総務課に戻って仕事を再開し、頭の片隅には辛そうに仕事をする幸雄さんのことが残っていた。

 (倒れなきゃいいんだけどな…)

いつも遅くまで仕事をしているし、心配でしょうがない。

帰宅して歩いてると道にはまだ雪が残っていて、所々に雪だるまがあり、2段重ねの雪だるまや、趣向をこらして動物だったりと、冬ならでわの雪だるまに、にこやかになる。
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