「ねぇ、何か頑張ってるのは伝わるけどいまいちだよね」
「多分ね、音のバランスが悪くて喧嘩しちゃってると思うの」


そんな会話をひそひそしながら、
ステージを見つめる。


最後のメインバンドが、サンキューっとステージをはけると
会場内から湧き上がるアンコール。

アンコールに答えるように狭いステージに姿を見せたのは、
各参加バンドの代表たちらしき存在。

そんな会場の子たちにとってのスペシャルバンドで何曲か最後に盛り上がって、
一度は暗転するステージ。



「いくよっ。
 唯香」



客席側のライトに灯りがともると、出口に向かう流れに逆らう様に
唯香と共にドセンを目指す。



「託実ぃっ!!」



最初にステージに向かって、名前を叫ぶ私。


暗転したステージの幕の裏では、
Ansyalの機材を大至急入れて
セッティングしているのが手に取るようにわかる。


会場内の異常な雰囲気に、
一度出ようとしたファンたちが、

『Ansyalの機材車が来てたって』っと騒々しくなっていく。


出口に向かってた人波が一斉に戻ってくるのを背後で感じる。
だけど私は、動かないんだから。


「Taka様ぁー」

「十夜ぁー」

「祈ぃ-」



いきなりの今日の大物登場に、
後ろからの押しが強くなる。


両足に力を込めて、踏ん張りながらも
私たちはその瞬間を待ち望む。


ステージからは、音出しが軽く始まってる。


そして客席が暗転して、会場内に幻想的なovertureのサウンドが
広がると客席側のメンバーコールは
これ以上にないくらい盛り上がりを見せていく。


負けじと声を張り上げる唯香。

TAKAの名を叫び続ける唯香の隣、
私は託実の登場をドキドキしながら待ってた。



夢のようなシークレットLIVEは、
20分くらいで終わってしまって私たちは放心状態の様になりながら、
会場を後にした。