ジャスミン

〜健司〜

〜健司〜

いつものように、会社裏の目立たない公園の前に車を停車させると、運転席側の窓を半分程開ける。煙草の煙をゆっくり身体中に行き届かせながら茉莉が来るのを待つ。

ミラー越しに茉莉が小走りで来る姿が見え、『ふっ。』と笑みが漏れる。まだまだ寿命はあるであろう長さの煙草をもう一息吸い込むと灰皿に押しつぶす。

初めて車に乗せた時は、助手席に乗ることを戸惑った様子だったが、今では普通に乗るようになった。

それが、茉莉との距離の近さを表しているようで何だか嬉しい。

飯でもという俺の言葉を茉莉が遮る。

話ってなんだ?俺はプライベートまで、仕事を持ち込む気はない。

だが、茉莉の口から出た言葉に頭を鈍器で殴られたような衝撃を感じた。


俺との関係を解消する?

冗談じゃない!茉莉は不倫に拘っているのか、奥さんに悪いだなんて、そんなこと気にすることじゃないのに。

…もしかして他に好きな奴できた?俺の質問にあきらかに動揺する茉莉。
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