私の師匠は沖田総司です【上】
でも、喉がカラカラだったので、濃いお茶が渇いた喉に染みわたります。

「美味しいです」

「そりゃよかったでさァ」

しばらく藤堂さんとふたりで、秋の冷たい風を体に感じながら過ごしていると

「あれ。君、まだ此処に居座ってるの?」

「組長……」

偶然通りかかったと思える若き師匠の姿がありました。

ちなみに私は若き師匠のことを“組長”と呼ぶことにしています。

今まで師匠と呼んでいた人を“沖田さん”と呼ぶのは違和感を感じて、でも、“師匠”とは呼べないので“組長”と呼ぶことにしました。

1週間経過した今でも組長には嫌われています。

会うたびに、疑う様な感じで睨まれていました。

組長の睨みにはいつも心にズキッとくる。

「平助。早くそんな怪しい奴から離れなよ。いつ寝首を掻かれるか分からないよ」

「総司、天宮はそんなことしねェよ。ここ1週間、仮の入隊以外何もしてやせん」

「たかが1週間だよ。1週間でそいつの何が分かるのさ。それに」

組長の鋭い双眸が私に向けられました。

「土方さんから聞いたんだけど、そいつの出生が今でも分からないらしいんだよね。天宮って苗字はあるらしいんだけど、蒼蝶って言う名前の女はいないんだって。

自分からも話そうとしないし、怪しすぎるよ。疑わない方が無理だよ」

「総司!」

「藤堂さん、もういいです。お茶、ありがとうございました!」

私はこれ以上、組長の言葉が聞きたくなくて、逃げるようにその場を離れました。

藤堂さんが私の名を呼びます。

でも、私は走る速度を緩めませんでした。
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