五月に入り、ちょっと動くと汗ばむようになってきたある日のこと。

仕事を終え、更衣室で私服に着替えていた私の元へ、同じく仕事上がりの本田がやってきた。

自分の着替えはほとんど終わっていたけど、逆に男の人の着替えを見るのも恥ずかしいものがある。

だから、「お疲れ」と言ってそそくさと去ろうとしたのに、何故だか本田にがしっと肩を掴まれてしまった。


「……どしたの?」

「やばい、環、おれ」


いつになく本田の表情が険しい。何か仕事でミスでもしちゃったとか……?


「……電話番号、受け取っちまった」


深刻な様子でそう言った本田。


「電話番号……って、誰の?」

「お客さん……女の。“初めて見たときから好きでした”――って告白付きで」

「へえ……それは困る……って。え? やったじゃん!」


ついに本田にも恋の相手が!

何をそんなに深刻ぶってるのかと思ったら、照れてるだけだったんだ!

友達として素直に嬉しくて笑顔で本田の顔を覗き込むと、その表情はどうしてか暗い。


「……嬉しくないのか? 彼女欲しがってたのに」

「や、なんつーか……突然すぎて、嬉しいっていうより困惑の方が勝ってて」

「そっか、向こうはずっと本田を見てたとしても、本田にとっては初対面だもんな」


いきなり告白されても困る……か。

でも、本田には幸せになって欲しいから、どうにか進展させたいなぁ。


この作品のキーワード
男装  秘密  逆ハー  ソムリエ  ワイン  俺様 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。