「今日は、散々だったみたいね? 私は仕事中だったから見てないんだけど」

「はい、まぁ……でも、自業自得なんです。彼女を騙したのは私なので」


香澄さんの運転する車で家まで送ってもらう途中、私はそう言って窓の外を見た。

出勤するときに降っていた雨は、傘が必要ないくらいの小雨に変わっていた。


仕事中はかなえちゃんのことばかり考えてるわけにもいかなかったからそこまでダメージはなかったけれど、勤務時間を終えた今、私の心は鉛のように重い。

須賀さんを始め、あの事件を見ていた同僚たちはみんな私の味方をしてくれたけど、だからこそ胸が痛い。

みんながかばってくれればくれるほど、性別を偽っていることへの罪悪感が成長してしまって……


「そんなに気に病むことないわよ。本田くんの気持ちが彼女にないことは確かなんでしょ?」


コクンと頷くのと同時に、脳裏に蘇った本田の言葉――


『お前が女だったら迷わず付き合うのに』


……き、消えて消えて! あれはそんな深い意味ないって……!

車内が暗くて助かった。

きっと今の私、顔赤くなってるもん……


「……さ、着いた。とりあえず、今日はウチの人が休みでよかったわね。あの人がこのこと知ったらまた面倒なことになりそうだし」


香澄さんの言葉に、またずしんと心が重たくなる。

確かに今日のことをオーナーが知ったら、今度こそ私のクビを決断する材料になりそうだ。


「私からは言うつもりないから安心してね」と微笑んでくれる香澄さんには、感謝してもしきれない。


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