音楽が聴こえる

side ジュン

◆◆◆
あームカつく、ムカつくっ。

廊下を踏み鳴らすように歩いても、このムカつきは止まらねーし。

見てくれ通り、地味で保守的な言葉を吐きやがった。


悟さんと話してたからって、別に俺達と関わる必要なんかねぇのは分かってるけど。


何も見てない振りしやがって。

……俺達の演奏も。歌も。

クソッ!


訳の分からない苛々を腹に抱え、3年の校舎に差し掛かった時、甲高い声が俺を呼び止めた。

「ジュンヤ」

同じ学年の朝田梨花(あさだ りんか)だ。

去年のミス陵北(りょうほく)高校で、とてつもなく可愛い顔をした女。

だけど、セルフプロデュースの出来る計算高い一面も、俺は知っている。

まぁ、性格なんて俺にはカンケーねーし。

「探したよ。どこ行ってたの?」

「……別に」

俺が尖った視線を投げると、彼女が少し怯んだのが分かった。

「ね、この間の約束覚えてる?」

「約束?」
< 28 / 195 >

この作品をシェア

pagetop